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その眼差しは 2※
振り返ると、間近で息遣いを感じる。
下腹部を撫で回していた手が、いつの間にか脇腹を這い上がり、控え目に胸元を掠める。
そうして鎖骨を通り、次いで首筋をやんわり掴むと、えもいわれぬ感覚が駆け巡る。
ぞくぞくと、甘やかな歓楽に支配され、思わず鼻にかかった吐息が零れていく。
一瞬にして動きを封じられ、痺れるような快感に苛まれていると、不意に唇を塞がれる。
「ん……、おい」
声を上げるも、再度柔らかな唇を重ねられ、ぬるりと舌が侵入する。
やられた、と思う間もなくねじ込まれ、忍ばせた舌はすぐにも捕らわれてしまう。
初めは触れるだけの口付けが、気が付けば濃密なキスへと成り代わり、唾液が音を立てて静謐 なる夜を淫らに溶かす。
舌が触れ合う度に蕩けるような熱情を孕み、甘ったるい溜め息が密やかに空気を震わせ、抗う気持ちがいとも容易く崩されていく。
「ん……、んぅ、は……」
眉を顰めるも、上気した頬は悦楽を享受し、舌で口内を撫でられる度に理性が剥がれる。
どうしてか漸にキスをされると、気持ちが良くて仕方がない。
抗う威勢を奪われ、舌が絡み付けば力が抜け落ち、次第に何も考えられなくなっていく。
言えば調子に乗るに決まっているので、これから先も告げるつもりはないのだが、彼との口付けには滅法弱い自覚はあった。
「はぁ……、ん、おい……、も、よせって」
「えっちする気になった?」
「してんだろ、もう……」
「へえ、素直に認めるじゃん。そんなに気持ち良かったの?」
カチ、という音と共にベッドヘッドの灯りに照らされ、仄かな暖かみに包まれる。
背後から抱き締めていたかと思えば、急に離れて敷布へと手を付き、気が付けば美々しい容貌に見下ろされる。
左の眉尻に填まったピアスが鈍く輝きを放ち、銀糸のような髪が妖しげに煌めきを帯びる。
普段は涼やかで、品のいい顔立ちに僅かにでも劣情が垣間見えた気がして、それだけで何故か身体の奥が疼いていく。
暑さのせいだと言い訳しても、口付けの名残が口角から伝い落ちていて、艶めかしく貪られた感触を覚えている。
目眩がしそうだ、仰向けに寝かされた腕に指先が降り立ち、くすぐるように滑らせながら手首を捕まれる。
そうして迫った顔に気付いても、何度目かの口付けを当たり前のように許してしまう。
抵抗する気力を奪われたまま、重ねた唇はすぐにも離れて視界から消え、やがて胸元からふしだらな感覚が沸き立つ。
「お前、また……」
嫌がって手を彷徨わせると、程なくして柔らかな髪の感触に行き当たるも、舌の上で尖りを転がされて言葉に詰まる。
熱を孕んだ口内へと誘われ、唾液を絡み付かせた舌で撫でられると、髪を鷲掴んでいた手から力が抜けていく。
やめさせたいのに、弄ぶように甘噛みされた箇所から快楽が芽生え、ねだるように乳頭が芯を孕んで熟れる。
「あ……、なんで……、お前、そこばっか……」
「ん~? おっぱいいじめられんの好きでしょ」
「誰がだテメ、あ……」
「そんな悩ましい声上げてるくせに、何言ったって説得力なんかねえだろ」
ちゅ、とわざとらしく音を立てて吸われ、溜め息混じりの嬌声が零れていく。
いつからそんなところで感じ入るようになったのか、今となってはもうわからない。
知らぬ間に身体を塗り替えられ、快楽を貪るようになって、秘めるべきであった一面を絶えず引き摺り出されている。
気に入らないのにわがままを許してしまうのは、自分でももうどうにもならないようだ。
「くそ……、調子乗りやがって」
「なに拗ねてんの?」
「拗ねてね、ん……、おまえ、しつけえ……」
「そんなの今に始まったことじゃねえじゃん。それに、お前くどくされるほうが好きでしょ」
それは好きと言うべきか、力ずくで躾けられたと言うべきか。
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