50 / 53

その眼差しは 7※

「ん……、あ、あぁっ……!」 足裏が敷布を擦り、堪えようと足掻けども波打つ欲望は些細な刺激で決壊し、遮るものを失った快楽が我先にと勢い良く押し寄せてくる。 すでに先走りで溢れていた自身から、歯止めのきかなくなった欲望が次へと噴出され、急激に身体が鈍っていくのを感じる。 「はぁ……、は……あ、う」 漸の頭部に手を添えたまま、力なく寝台へと沈み込んで深く息を吐き、全てを解き放った甘やかな余韻に襲われる。 火照る首筋を艶めかしく汗が伝い、微かに指を滑らせると柔らかな髪の感触がして、夢心地のような浮遊感に苛まれていく。 びゅる、と白濁が噴き出してからは、とろとろとだらしなく溢れていく感覚があり、最早出尽くすまで自力では止められそうにない。 暫し脱力して、そうしてようやく惚けた顔を向けると、ちょうど漸がごくりと喉を鳴らしながら顔を上げている。 「あ……、おまえ、まさか」 「ん……。いやいや言う割に、容赦なく口ン中ぶちまけてくれちゃって。真宮ちゃんの精液で口ン中いっぱいになっちゃったじゃん。溜めに溜めてたんだ?」 「だから……、離れろっつっただろ……。それなのにお前が」 「そんなの、知らねえもん。それよかちゃ~んと残さず飲めたでしょ? 褒めてよ」 「なんでそうなるんだよ。褒める要素なんて一つもねえっつうの。怒りてえんだよ、俺は寧ろ……!」 握り拳を作るも、漸は悪びれもせずに微笑んでおり、指に付着した白濁を丁寧に舐め取っている。 「舐めんな、やめろ」 「あ、真宮ちゃんも欲しい? ほら」 「バカ、本気で言ってんのかテメエは!」 「ハハ。そ~んな怒んなくてもいいじゃん。せっかく気持ち良くなれたのに、何が不満なわけ?」 「アレもコレも全部不満だ。お前は言うこと聞かねえし」 「アレもコレもって、なァんか子供みてえ」 「あァッ?」 「はいはい、怒らない。俺は言うこと聞かねえし? あとは……? なんて? 聞いてやるって」 ギシ、と寝台がささやかに音を立て、敷布へと手を付きながら漸が下腹部から移動する。 制止する間もなく、あっという間に手を絡め取られて見下ろされ、にこやかに先を促してくる。 振り解こうとしても、手首を捕らえながら指先で掌を擦られ、まるで劣情を煽るかのようにくすぐってくる。 「あとは……」 「なあに?」 「おい、さっきからその触り方やめろ」 「ちょっと擦ってるだけじゃん。こんなので感じちゃうの? 敏感になっちゃって」 「だからお前」 「それで? あとは? 俺に言ってやりてえことの一つでもあるんじゃねえの?」 「それは数えきれねえくらいある」 「ふうん、例えば?」 「わがまま」 「はいはい、次は?」 「ん……、な、まいき」 「まだあんの?」 「あ……、はあ、クソガキ……、おい、喋ってんだろ……」 思いついた先から口にすると、覆い被さってきた漸に首筋を舐められ、徐々に上手く紡げなくなる。 たまらず声を上げても、はいはいと適当にあしらわれるばかりで不満が募り、愛撫は一向に止まる気配がない。 最後まで喋らせろと文句を浴びせようにも、自分でも驚くくらい言葉にならない声が出て、鼻にかかった甘ったるさに動揺してしまう。 「クソガキとかただの悪口じゃん」 「かわいいもんだろ」 「どこが? 傷ついた」 「ハ……、それくらいで傷つくたまかよ。あ……」 「キスしよっかなァ」 「やめろ」 「ねえ……、真宮。挿れていい?」 上体を起こした漸に見下ろされ、じっと熱っぽく視線を注がれる。 その眼差しに見つめられるだけで身体が熱くなり、どうしようもなく疼いていくのを感じる。玉のような汗を掻いて、それなのに不思議と気にならなくて、初めから互いのことしか視界に入っていない。 目眩がしそうな程の熱情に当てられ、今更抗えないことは知っている。

ともだちにシェアしよう!