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Laurel【2】※
「なあ、真宮」
リモコンを片手に、ぼんやりとテレビを眺めながら座っていると、背後から声を掛けられる。
「なんだよ」
振り向かず、テレビへと視線を注ぎながらチャンネルを操作し、何か面白い番組はないものかと次から次に変えていく。
目の前のテーブルには、小振りの灰皿が無造作に置いてあり、幾つかの吸い殻が灰と共に埋もれている。
側にはライターと、若干潰れかけている煙草が横たわっており、今のところは次なる一本へ手を出そうとは思っていない。
「触ってもいい……?」
毛足の長い絨毯へと座り込み、飲み掛けの缶ビールを傍らに置いていると、思わぬ台詞を告げられて一瞬動きが止まる。
そうして背後には、ソファへと腰掛けている漸 が居ることを意識し、視線を注がれているように感じて段々と居心地が悪くなっていく。
「何言ってんだ、お前……」
「理解出来なかったならもう一度、触ってもいい……?」
「一回言われりゃ分かる!」
「あっそ。それならさァ、早くお返事聞かせてくれる……?」
「うっ……、つかテメすでに足で踏んづけてんじゃねえかよ……」
なんとなく振り向けないまま、いつしか一つの番組へとチャンネルが固定されるも、ただ眺めているだけで一切頭の中には入ってこない。
どうしていきなりそんなことを言い出すのかとわけが分からず、言葉に詰まっていると返事も待たずに何かが背中へと触れ、すぐにも足蹴にされている状況を理解する。
「態度悪ィな……、足蹴にしてんじゃねえよ」
「とんでもない、これはマッサージです。お客様、痛いところは御座いませんか……?」
「テメエに蹴られてるとこが今まさにイテェよ、バカ野郎」
「凝ってんじゃね?」
「力加減っつうか、思いやりが足りねえだけだろ。踏むな、バカ」
テレビからは賑やかな談笑が漏れ、聞き流しながら未だにぐりぐりと素足で踏んづけられており、非難を浴びせても何処吹く風で大変楽しんでいる御様子である。
「やめろっつってんだろうが」
「なあ……、触っていい?」
「もう触ってんだろうが。つか踏んでんだろ」
「ふうん、なに……? 触っていいわけ」
「なんなんだよ、テメ。大体今まで断り入れたことがあったかよ」
「ない」
「ぐっ……、それはそれで自信満々に答えられるとムカつくな……」
いつも問答無用で触れてくるくせに、何故だか今夜はお伺いらしきものを立てているのだが、結局普段と大して変わらないような気がしてくる。
全く意味が分からんとお手上げ状態で、リモコンを絨毯へと放ってから缶を取り、ビールを一口煽る。
すると程無くして背中から温もりが消え去り、どうやら足蹴にする行為からは退いてくれたようである。
「真宮」
静かに名を呼ばれ、次いで新たな温もりが触れてきたかと思えば、背中から首へと指を這わせられてびくりとする。
ようやく振り向いてみれば、見透かしていたかのように彼が迫ってきており、状況を把握する間も無く唇を重ねられる。
「ん……、っにすんだテメ……」
「苦い……」
「ビール」
「ビールは好きじゃない……」
「ガキ」
「おっさん」
「そんな歳じゃねえよ。二つしか違わねえだろ、失礼な野郎だな……」
殆ど触れるだけの口付けであったにもかかわらず、敏感に苦味を感じ取って漸が眉を寄せており、勝手に仕掛けておいて不満を漏らされる。
「なあ、真宮。触ってもいい……?」
「しつけえな、なんの意味があってンなこと聞いてくんだよ。もう触ってんだろ」
「だから改めて……、たまには聞いてやろうかと思って」
「ンだよ、それ……」
暫くはソファへと大人しく腰掛けていた彼は、後ろから手を回しながら絨毯へ腰を下ろし、わざわざ狭いところに移動してきて馬鹿なのではないかと思う。
ソファへと凭れながら、するりと両の腕を腹部にまわされ、後ろからぎゅっと抱き締められる。
身動きが取れなくて不満に思うも、彼はお構い無しに首元へ顔をうずめ、弱い部分へと口付けてくる。
「おい、やめろ……」
「触っていい……?」
「だからもう触ってんだろ」
「触らせてやってるみたいにしか聞こえない」
「お前が勝手に……」
「嫌……?」
「つかテメ何処触ってんだよ」
耳元で囁かれ、甘やかな声を発されて背筋がぞくぞくと痺れていき、気が付けば一方の手に肌を撫でられている。
いつの間にか衣服を捲られ、指先を滑らせながら腹部から胸へと進んでいき、尖りに触れられて軽く押し潰される。
頬に朱が走り、いつの間にか妖しい雰囲気に包まれていることに気が付くも、やめさせようと手を伸ばせばぐにぐにと乳首を弄られてしまい、もう一方が下腹部へ下りていってどうしようもなく焦る。
「やめっ……」
「お前の口から聞きたい。触ってもいいの……?」
「んっ……、なんで今更、ンなこと聞くんだよ」
「嫌がられてたら傷付くから」
「はっ……、バカじゃねえの……。嫌だったら、とっくに……」
「なに……?」
「うるせぇっ……、んっ、なんでこんなことになってんだよ」
「真宮ちゃんが可愛いから」
「ぶっ殺すぞテメ……、ん」
やめさせようとするも、本気で嫌がっているわけでもなく、元より制止を試みたところで最終的にはいつも流されてしまう。
急にしおらしい台詞を吐きながらも、裏腹に手は我が物顔で人様の身体をまさぐり、吐息を漏らしている間に自身へと触れられる。
外気に晒して緩やかに扱かれ、すぐにもくちゅりといやらしげな音が出始め、漏れていく吐息に熱量が増す。
「はぁ、はっ……、ん」
「えろい声。もっと聞かせて……?」
「んっ……、バカなこと、言ってんじゃね、あっ」
「真宮……、触りたいと思うのは、お前だけ……」
「あ、うっ……、はぁっ、はっ」
「お前だけだ……、真宮……。お前さえ居てくれたら俺は……、他になんにもいらない」
力を失い、漸へと身体を預けながら思考を奪われていき、くちくちと弄られているそこから得も言われぬ快感が湧き出してくる。
胸の突起にも愛撫を施され、滅多に言わないようなことを紡がれて甘えられ、唇を奪われて自然と舌を絡め合う。
すっかり劣情に溺れ落ち、先端からはとろとろと欲が溢れ出しており、いやらしい音を発しながら悩ましくそそりたっている。
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