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Eremurus※

ぎゅ、と敷布を掴み、一方の手で唇を押さえ付けるも、情欲に塗れた声が隙あらば滑り落ちていく。 息つく暇もなく、艶かしく糸を引きながら唾液を溢し、誘うように淫らな溜め息を止められないでいる。 全身が火照り、今にも甘やかな熱へと押し流されてしまいそうで、すんでのところで堪えている。 下腹部から連なる音が、狂おしい程の劣情を押し付けていき、拡げられていく其処がひくついている。 まるで期待し、待ちわびているかのように絡み付き、彼の指を喰らっている。 どれだけ否定し、拒んでも無情に現実を突き付けられ、身体はとうにひれ伏して受け入れている。 「気持ち良くてたまらないって顔してる」 「んっ……、う」 「何にも言えなくなっちゃったの? さっきはあんなに噛み付いてきたのに。ようやく観念した……?」 内部を弄んでいた指が引き抜かれ、自身から伝い落ちていた白濁を纏わせながら、擽るように腹部へと触れて柔らかに語り掛ける。 欲深な蜜で汚し、僅かな刺激ですらも反応を示してしまう身体を前に、彼は慈しむように微笑んでいる。 しなやかな体躯を撫でられ、放られている其処は熱を抱えたままひくついており、しきりに熱量を受け入れたがっている。 「一応聞いてあげようか。入れてもいい?」 「はぁ、う……、い、やだ……」 「ハァ、またそういう事言う。真宮ちゃんさァ、自分が今どんな顔してるか分かってる? 物欲しそうにしてるの隠しきれてねえけど」 「う、あっ、はぁ、あっ、や、め……あっ、あぁ」 「可愛い声出てる。折角だから大事なお仲間とやらに聞かせてあげようか」 「はぁ、あっ、う、やっ……、だ、め……だめだっ、あ、あっ、ぜんっ……」 「スゲエ出ちゃってるけど、またいっちゃいそうなの? そんなに気持ちいいんだ。でもこれだけじゃ物足りねえよな」 意に反する事を言えば、唐突にすぼまりへと指を突き入れて掻き回し、一方では自身へ触れて乱暴に先を擦られてしまう。 泣きたいわけではない、それなのに溢れてしまう涙が頬を伝い、半開きの唇からは最早感じ入る声ばかりが吐き出されている。 ぐちぐちと音を上げ、とめどなくいやらしいもので自身をけがしていき、後ろを解されて淫らに収縮を繰り返している。 抗えない、まるで甘えるかのように彼を呼び、今にも縋り付こうとしている。 すり、と宛がわれた其れに撫でられ、一気に快楽が伝ってじんと熱くなる。 だめだ、いやだと子供のように頭を振っても、彼を押し返すどころか悦んでいざない、先が入り込んで下品な白濁の量が増す。 「あっ……、あぁ」 堪えきれるはずもなく、問答無用で押し入ってきた熱量に圧倒され、息を呑んで涙を溢すも今更もう逃れられない。 ズズ、と受け入れていく下腹部の熱に圧され、目蓋を下ろして身震いする。 鼻にかかった吐息を漏らし、するりと口許から滑り落ちた手が頼りなくさ迷い、そうしている間にも彼が着実に収められていく。 「あっ、ぅ……、い、れんなって、いった、のに……あっ」 「いつそんな事言ったっけ。ねだられたのは覚えてるけど」 「はぁ、あっ、してな、あっ、そんな、ことっ、ん……」 「え~、そうだっけ。今もしてるじゃん。これだけ咥え込んでおいてよくそんな事が言えるよなァ」 「んっ、はあっ、あ、あ、うごくの、やめっ……」 「何言ってんの。お前が欲しいところはもっと奥だろ?」 ずぶずぶと呑み込まれて熱に穿たれ、喉元を晒しながら仰け反って喘ぎ、打ち付けられる度に抑えきれない声が放たれていく。 無理矢理にこじ開けられ、入り込まれているはずなのに熱が冷めず、擦られて気持ちがいいなんて咎められるべき言葉が脳裏を過っている。 ちがう、ちがうんだと宛てもなく言い訳しても、自身からは欲深な証が延々と垂れ流されており、ぐぐと奥まで侵される悦びに誘い込むように腰が動く。 敷布を這い、彷徨う指先が漸の手を探り当て、するりと肌を撫でてから手首を掴む。 拒むべき相手であるのに、許してはならないのに手を重ねたまま、そこが安息の地であるかのように触れ合わせている。 「あっ、う、んぅっ、はぁ、あっ」 寝台が軋み、嫌でも行いを思い知らされ、それなのに身体はより一層の快楽を求めてしがみついている。 穿たれる度に自身が震え、先からいやらしいものを散らして腹部をけがし、それでも止まらずにどくどくと溢している。 焦点が定まらず、彼の熱を確かに感じながら繋がりを深め、受け入れてはいけないはずの行為に溺れていく。 「はぁ、あぁっ、や……、やだ、そこ、あ、あぁっ」 「やだじゃねえだろ。此処が一番好きなくせに」 「あ、あぁ、すきじゃ、ないっ……、はぁ、んっ」 「そうなんだ。じゃあ、どうしたらいいの。望む通りにしてあげる」 律動が止み、急に手放されたようで不安げな眼差しを向けるも、そんな自分にはもう気が付けない。 見上げれば目の前には、美々しい容貌に笑みを湛えている漸が居り、ゆっくりと重なられてすぐに首がくすぐったくなる。 舌を這わされ、時おり噛み付かれ、決め手となるような刺激を与えられないまま、其処では未だに彼の熱が収まっている。 いいところを探られ、けれども放っておかれてしまい、疼いていると分かっていながらどうする事も出来ないでいる。 ちゅ、と口付けをされ、汗ばむ首が唾液と共に艶かしく彩られていき、より扇情的になっていく。 間近で息づく彼に触れ、知らぬ間に堕ちていた身体は容易く這い上がれず、いつしか名を紡いでしまう。 「あっ……はぁ、ん……ぜん」 ぐ、と重ねていた手に力を入れ、もう一度途切れながらもその名を呼ぶと、顔を上げた彼と視線が絡む。 「なに」 「ん……」 「言わなきゃ分かんない」 「あ、ぅ……ん、はぁ、ぜ、ん」 「そうやって呼べばいいと思ってるだろ」 そう言いながら頬を撫でられ、自然と唇が触れ合って舌が絡み、ちゅくと音を立てて従順に応える。 自分から舌を差し出すくらいに躾が行き届き、ゆっくりと丹念に口内を弄られて蕩けそうで、溜まりに溜まった熱に今にもどうにかなってしまいそうだ。 相手が誰で、どういう人間で、どのような関係であるかをあんなに考え、思い悩んでいるはずなのに、相容れないはずなのにまた縋り付いて、頼っている。

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