786 / 1053
第15章の16
自問自答する諒に向かって、社長は突然、
「諒、お前にそれを言う資格があるのか? 」
「えっ? 」
意外な質問に諒はたじろいだ。
「お前こそ麻也を<都合のいい男>にしてるんじゃないのか?
お前に似合いの綺麗な売れっ子ミュージシャンなのに、
オフも子供のいるお前に合わせてくれるわ、
同棲して愛もエッチも 保証してくれるわ、
女性とかかわるのも自分の子供を持つのも諦めてくれるわ、
東京ドームに連れて行こうとしてくれるわ…」
「うるせえ! だったらその麻美っての連れてこいってんだ! 」
諒は相手が 社長ということも忘れて叫び、立ち上がった。
「うるせえっ! このビビりのデビッド・ボウイがっ! 」
社長も怒りにまかせて立ち上がり、掴み合いになりそうなところに須藤が割って入った。
「二人ともやめてください!
諒さんも、社長にそれはないでしょう!
証拠を集めて、本人に問いただしましょう!
そうじゃないと諒さんも麻也さんも気の毒だし、
真実を押さえておかないと、外部への対応もできませんし、
間違ってファンに広まったら…」
それを聞いた2人はあわてて手をひっこめた。
が、社長は立ったまま困ったように頭をかくと、
「証拠ったってなあ…契約の時に提出してもらった戸籍謄本は、普通に親御さんと兄弟と…
あと、赤ちゃんの時に亡くなったお姉さんが載ってただけだし…」
ともだちにシェアしよう!