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第15章の23

「兄貴にはどうするんですか? 」 諒は固唾をのんだ…が、社長は、 「いや、もう証拠は揃ったから、麻也には訊かないし、耳にも入れたくないんだ。] すると須藤も真樹も、今朝の麻也と諒の様子から、 麻也の耳に入れないわけにはいかないと詰め寄った。 が、しかし、また真樹には珍しい、泣きそうな声で、 「でも、探偵とかは絶対に使わないでください。 さっきも言いましたけど、兄貴のことが好き過ぎて、 子供まで産んだ人がいたとしても、それは兄貴すら知らないわけだから、その…」 「寝た子を起こすな、と…」 「そう、それです… 兄貴が今、諒に嫌われて、捨てられたら死んじゃいますよ… 諒も死んじゃいそうだけど…」 …その言葉を聞いて、諒の全身には電流が走った。 (真樹の目にも本当に見えてるのか…麻也さんが俺のこと好きだって…) …熱いものがこみあげてきて、涙に変わって流れるのを、諒はようやくこぶしで拭った。 (麻也さんの過去探しはもう、いい。 でも、いつも俺がそう思うと、なぜか誰かが吹き込んでくる… もう二度と、こんなの嫌だ…)

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