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第15章の25
そして、
「諒、脱退がどうとか、引退がどうとかっていうのはこれが原因だったの? 」
諒はうなずくのがやっとだった。が、どうにか、
「麻也さんが、もし子供と暮らし始めたりしたら、俺、俺、一緒にはいられなくなるじゃん。
でも悲しいけど、バンド゙はやめたくないからやめないって…」
「あーもう、泣くなって…」
真樹は優しく諒を抱きしめて、あやすように後頭部をポンポン、と叩いてくれた…が…
突然、真樹は真っ青になって叫んだ。
「しゃ、社長! それで恵理ちゃんは?! ご両親は?! 」
すると社長は穏やかに、
「だから、それは一切ないよ。安心しろ。」
すると真樹はへなへなと床に座り込み、
「よかったあ、もう俺、そっちしか頭に浮かばなくって…」
「でも、そんな大切なことなら、彼女はいの一番にお前に教えてくれるだろうさ。」
「そりゃあ、そう約束してますけどぉ…」
それを聞いて、諒はちょっと嬉しくなった。
ああ、麻也の大事な弟も、幸せな恋愛をしているんだ、と…
でも、次の瞬間にはまた嫌なことに気づく…
(でも、やっぱり、人気商売なりのつらさが真樹にもあったってことじゃん…
恵理ちゃんが社長に直訴したって思うなんて…)
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