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第15章の33

 すると、座敷に上がりたそうな麻也に、社長が声をかけた。 「麻也、カップル席取ってあるから。ほら、諒、案内して。」 とはいうものの、諒もどの個室かは…と、そこに店長が通りかかったので、 麻也が声をかけてくれた。 諒はバッグを持つのも忘れて、店長と麻也の後ろをついていった…  赤と金の和モダンな壁紙の、掘りごたつ風の座敷で、諒は麻也と向かい合って座ったが、 すぐに麻也に、可愛らしい笑顔で手招きされた。 「な、何でしょうか? 」 「奉行、遠すぎ。不便だから、こっちに来て♪ 」 「不便、ってアナタ…」 「いいから、早く。」 と、必殺技<小首かしげ>で攻めてくる。諒はあえなく陥落… 「ん、もー…」 と口では言いつつ、いつもの2人に戻ったようで嬉しくて、 でも、この麻也の歩み寄りを逃したら本当に破局になるような気がして、 諒は麻也の隣、襖に近い方に移って座った。 …ん…チャイムはあるけど、オーダー係もしやすいねえ… じゃあ… 「てへ、役得…」 と言って、諒は麻也の体をぎゅっと右腕で抱き寄せた。

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