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第15章の40

諒のショックが伝わってくる。 言っている麻也本人もつらいのだが、でも… 「次のアルバムは本当に売れると思う…露出も多いから、ツアーも盛り上がると思う。 他のバンドの例から考えると、ツアーが終わる頃には…東京ドームの話が出るんじゃないかな? ってのは俺の希望的観測だけど…だから、それまでには俺も気持ちを整理できると思うから…」 「麻也さん、何言ってるの? 俺、わかんないよ…」 「…それは、その、あの…」 涙を見られるのが嫌で、麻也は口を引き結んだが、 それ以上に、言うことの方が大切だと思い、 泣き顔になりながら、どうにか、 「諒、いっつも俺のウワサに傷つけられてるじゃん。 でも、お互いが、ただのバンドのメンバー同士ってだけなら、 諒は傷つかなくって済むじゃん…」 「…いや、ただのメンバー同士って、はあ? 」 決定的な言葉は、さすがに麻也も言い出せない。それこそ<察して>ほしい。 気が付けば、諒に抱き寄せられていた。諒のこのぬくもり…また失うなんて嫌だけれど… 「…何で? どうして? 」 「だから、お互いの精神衛生上よくないから…」 「それだけ? たったそれだけ? 」 「そう。でも、今日みたいに大ごとになってるじゃん… そんなこと続いたら、誰もついてこなくなっちゃうじゃん…」

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