827 / 1053
第15章の57
「諒、大丈夫…? 」
しかし、麻也の方もいくつもの疑問が出てきて、諒に近づくとその腕を掴んでしまった。
「どうして連絡くれなかったの? くれたら俺、早く帰ってきたのに…」
と言ってから、もしかして携帯の電源を切っていたかな、と、ひやっとしたが、
「だって、せっかくの麻也さんの休みを邪魔したくなかったんだもん…」
「にしてもさ、よく帰ってきたね。」
すると諒は神妙な顔をして、
「昨日も親父たちに<せっかくの休みなんだから、友だちとかに会ってくれば>って言われたから、麻也さん誘ったのね。
でも、女の子誘ってると思われたくなくて、<麻也さんと仕事の打ち合わせしてくる>って言って出たの…」
すると帰宅後、父に心配そうな顔で、
「大翔といると疲れが取れないだろうから、いつものマンションに帰れ。」
と言われたのだという。もちろん諒は拒絶したが、父はなおも、
「休み明けにその疲れた顔じゃあ仕事に差し支えるだろう。
周囲のみなさんにもファンにも悪いから、マンションに帰って少しでも休め。」
と言い、母にも、
「まだまだ大翔に手がかかる時期は続くんだから、また次の休みにでも来なさいよ。」
と、優しく言われたという。そしてとどめは父親のひと言で、
「この日本中探したって、お前の代わりの歌手はいないんだから。
でも、大翔のサポートは、俺とお母さんにもできるんだから…」
そう話す諒は少し嬉しそうだった…
ともだちにシェアしよう!