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第16章<ロックのチャートはこの手の中>の1
明るい色の防音壁、一面だけの鏡張りの壁、そんなものに囲まれたかなり広い、
清潔なリハーサルスタジオ…
なのだが、ディスグラのメンバーの希望する機材…
直人のドラムセットにいくつものアンプ、PA卓、
麻也と真樹のエフェクターボードや6台ずつの楽器、諒のマイクスタンドなど…
さらに人間はメンバーやローディーやエンジニアたち…で、あっという間に狭くなる。
床には無数のケーブルが這っている状態で、歩くのにはちょっと気を遣う。
正月なんてはるか昔に思えるくらい、麻也たちはまた忙しいスケジュールの真っただ中にいた。
7枚目のシングルの、テレビ向けのリハーサルは終えていたが、
それ以外のプロモーション活動もあり、
さらにかぶさるように4枚目のアルバムもリリースされるのでそのプロモーションもあり…
そして、今日は4月末からのツアーのリハーサルだ。
メンバーそれぞれ自分なりの音は作ってきたのだが、実際に合わせてみると、
しっくりこない部分も出てくる。
そのあたりは残念ながら、売れていても、センスが良くてもまだ経験の浅い、若いバンド特有のものだった。
が、その中では経験の多い麻也は判断が早く、全体の音もまとめていくが…
この日は、真樹と直人の深夜のラジオ番組の日で、麻也と諒がゲスト参加して、
シングルとアルバムの宣伝をする予定になっていた。
それはいいのだが、翌日はあのアイドル、鈴音のレコーディングのリハーサルに麻也は立ち会わなければならず、
この2日間は自分たちのリハーサルの時間が結構削られる…
(それが終わってから、アセらずこの曲のギターソロの音色は決めようかな…)
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