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第16章の18

 …そう考えると、基本中の基本である音作りから、 ステージ作り、果てはツアーグッズの製作まで、 これまでやってきた規模のライブすら、よくやれたものだという気がしてくる。 しかし、スタッフに支えられている部分も大きいし、 でもその分毎回関わるスタッフの数も増やしてもらえるので安心だが、 逆の見方をすれば、その人たちを食べさせていく収益も上げなければいけない…  そして何より、それもこれも、自分たちを待っていてくれる何十万というファンがいてくれるからで… (…初めて諒と出会った時から、ずいぶん高みに来れたんだな…) そんな喜びとこれからの不安で、 諒の横顔を見ながらギターを持ってスタンバイしていても、 何だかめまいを覚える。  でももう、ツアーという祭りは何としても始めなければならないのだ。  …と覚悟が決まったところで、リハーサルが再開した。  しかし…今回から使うギター、例のピンクのレスポールも、まだいい音を探し当ててはいない。 せっかくの新しいギターだし、ユニークな色なので、ギター小僧以外のオーディエンスにもウケると思うのに…  ほんの少しだけ、と、みんなが食事の休憩に入った後も、麻也はピンクのテストをしていたが、 「麻也さん、メシだよ…」 気が付けば諒が呼びに来てくれていた…

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