867 / 1053
第16章の33(←3人まで疑われる諒と麻也クン)
諒はだんだんヒートアップしていくが、
その表情から見ても、また正月のことを考えあわせても、
麻也も嘘だとしか思えない。あの三が日で浮気なんて…
でもここで積極的に応援すると、<おや珍しい>とかえってこっちが何か探られそうなので、
麻也は黙っていた。
「…須藤くんは、関村女史の差し入れは仕方なく受け取って、
誰も手を付けずに処分してたっていうけど、
陰でその…高いブランド物とか押し付けられたとかそんなことはなかったの?
お前ら、クルマはどうしてる? 」
(諒にまでクルマのウワサがあるのか…? )
「もちろんあのベンツです。麻也さんの実家の。」
「諒、麻也がいないところなら本当のことを話してくれるか? 」
この言葉には麻也もさすがに血の気が引く思いがした。
社長が知っているのは真実なのか、それともウワサなのか…
でも、諒を信じていることを伝えたくて、
「諒、あの人のことでどれほど嫌な思いしてるか、
俺がいると相談しづらいなら、俺、いったん席外すよ。」
諒は驚いて麻也を見てくる。社長も、
「おっ、麻也、今日は落ち着いてるな。」
「えっ? そうですか? 」
麻也はとぼけたが、事務所の社長は視点が違うようだ。
「まさか、おまえたち…3人で…」
「はあ? 」
そこに、ノックして入ってきたのは須藤だった。
手には、つばの広い黒いベルベットの帽子…
「社長、この帽子じゃないかって。麻也さんがかぶっていたのは…」
ともだちにシェアしよう!