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第16章の47(←諒の外泊を諦め始めた麻也王子)

 …そのうち、スタジオの真ん中で、監督と諒は頭を抱えていた。 またこの曲も、まあ少し憂いを帯びてひねくれているものの、 最後には一筋の希望の光を感じさせるものだったので、 本当は諒の美しいアップから始める予定だったのだ。 諒は監督の目を見据えて、 「…明日の昼間、顔の方は何とかメンテしてきます。 その結果を見て判断してもらえないでしょうか?」 それを遠巻きに見ながら直人は麻也に、 「小野ちゃんのことは、兄上に叱ってほしいからなんじゃないの?  話すきっかけがほしいっていうか...」 「え? 何で? 」 「だって、諒、詫びも入れてないんでしょ?  二人とも冷戦状態なのは見ててわかっちゃうよ。」 「うん…まあ、そうだけど…」 「下手したら今日も外泊かもよ…」 「え? 昨夜、帰ってないの? 」 真樹の言葉に直人はびっくりして、 らしくもなく大声をあげたが… 「じゃあどこに泊まったの? ウチに問い合わせもなかったけど。」 「わかんねえ。須藤さんにも外泊は知られてないみたいだって、ね、兄貴? 」 麻也はうなずいたが、口を開くのもおっくうだった。 「麻也さん、それでいいの? 」 「…うん…何でもいい。諒がきちんと動いてれば。 今のところうまく仕事は回ってるから、俺はそれで…」 とは言ったものの、心配してくれる二人の顔を見上げる勇気は麻也にはなかった。

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