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第16章の53
そこにやってきたのは諒だった。
「すみません、お待たせして...」
見れば、笑顔の諒の肌はつやつやしている。
メンバーたちには疲れがまだわかる感じで、
表情はやっぱり演技で何とかしてもらうしかないが、
まあ、マスコミや新しいファンに心配されることはないだろう。
場をなごませたい直人が、
「諒、肌つやずいぶんいいじゃん。どうしたの?」
と言うと、諒は麻也の方は見ずに、
「鍼打ってきたんだよ~ん。」
と、元気に直人の肩を抱いて言う。
これにはみんなびっくりだった。
「えー、諒、顔に? 鍼? カオだけは嫌っていつも諒、言ってたじゃん!」
びっくりしているみんなを代表して真樹が言うと、
「いいのっ! 諒子はぁ、美しくなるためなら何でもするのっ! 」
諒がオネエ言葉に紛らせてくれた、
仕事への思いの深さにメンバーはみな頭の下がる思いだったが、
直人だけは、下を向いて小さな声でつけ加えたのも他の三人は聞き逃さなかった。
「...それなら違う人に太い注射でも打ってもらえばいいのに...」
「え? 何? 」
諒は直人に 訊き返すと、
「…様のものは何でも上品で小ぶりなんです。」
と、気が抜けたように言い、最後まで麻也とは目を合わせずに、
セットの方へと歩いていった…
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