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第16章の58(←病気が特定できず不安な麻也)

 須藤が拝み倒してなじみのギター雑誌の取材を延期してもらい、 2人に連れられていつもの病院の内科に行ってはみたものの… 結局、麻也は、医師と二人きりになってもトラウマについて話せるわけでもなく… また以前と同じく、ストレスによる不眠として、 軽い睡眠導入剤を就寝前にのむだけになってしまった。 「…これで2週間様子を見て下さい。 効かなければもう少し強いのを出しますから…」 と、医師は言い、須藤と鈴木にも、 絶対に次の診療日に麻也を連れてくるようにと強く言い渡していた。 が、麻也は、 (実は思ったより重症で、この内科から神経科に回されたらイヤだな…) と、診察室の中をぼうっと見ながら考えていた…  その後は、整体をキャンセルして、二人は少し休めと麻也を自宅に連れ帰ってくれたが… リビングで諒とのことや今後のことを話しているうちに、 リハーサルスタジオに向かう時間になってしまった。 慣れたソファで楽な姿勢でいられたのはよかったが… 「別に、麻也さんと諒さんは普通にカップルのケンカしてるだけなんでしょう? 」 と鈴木に切り出され…まだ薬をのんだわけでもない麻也は疲れた頭で、うん、と答えた。 少なくとも麻也はそう思っていたかった。 これまでにない家出、それも麻也以外の人間に行先も知らせていない諒はどう思っているかわからないが… 「じゃあ、あとはお二人に任せていいですね? 」 須藤ではなく鈴木が話を進めるので、麻也は少し気が楽だった。 須藤だと、完全な決定事項になってしまったり、 社長へ報告になってしまうことも多いから… とはいうものの、この冷戦をどうにかする糸口は麻也には見つけられそうになかった…

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