894 / 1053
第16章の60(←めでたい夜にも戻らぬ諒に麻也は…)
社長を含め、心ここにあらずのような会議室に、
息せき切って転がりこんできたのは須藤だった。
「…アルバム、シングル、両方チャート1位ですっ!! 」
一瞬、みんな固まった…後、声を上げたのは真樹だった。
「本当? ねえ、本当? 」
いざ現実になると、諒が冗談で言っていた万歳三唱も出なかった。
「ほんとですってば! このファックスを見て下さい! 」
みんな証拠のファックスを真剣に見つめた。
そこには確かにアルバムの1位とシングルの1位のところに<ディスティニー・アンダーグラウンド>と書いてあった。
社長は目を真っ赤にさせながら、少し震えた声で、
「これからが大変だと思う。俺にも経験はない。
でも、みんなで誠実にファンを喜ばせていこうな。
この1位の曲で、東京ドームにファンのみなさんも連れていこうな。」
「はい! 」
みんな元気に答えたが…
諒だけは表情が青ざめて見えた。
「諒、どうしたの…? 」
自然に出た麻也の言葉だったが、諒はうつむいたまま他人行儀に、
何でもないです、と答えただけだった。
どうにか直人が、
「ボーカルだからって、一人で何でも抱え込まないでくれよ。
俺たちにも重圧分けてよ。分けてくんなきゃ無理やりグサリとやって持ってくよ。」
と言い、諒もかすかに笑みを浮かべた。
そこからは、もう服部と伊豆は祝勝会の手配で大わらわだった…
しかし、その夜も、諒は帰ってはこなかったのだ…
(この章終わり)
◆明日からは第17章<許されぬ恋…諒の場合>を更新の予定です。
ともだちにシェアしよう!