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第17章の19(←麻也王子しかいないはずなのに…)
「チーフ、すみません、まだかかります?… 」
二人を呼びにやってきたのは鈴木と三浦…
いま行くから、と諒の肩越しに須藤は答え、
諒は持っていたコートを、露骨かな、とは思いつつ、
三浦にではなく鈴木の方に渡した。
三浦の顔は見ないようにした。
が、彼は鈴木から諒のコートを受け取ると、
控室の方へと足早に向かっていった。
二人がドアの向こうに行ったのを見計らって須藤は、
「すみませんね。これで最後。
麻也さんはわざわざ言っていないかもしれないですけど、
いつぞや宴会の二次会か何かで麻也さんとじっくり話した時、
フロントの二人の足元には常に死屍累々と、
自分たちに狂ったファンたちの情熱や執着が埋まってないと…
って麻也さんはしみじみと言ってたんですよ。」
「あ… 」
「あ、やっぱり言ってたんでしょう?
そしてそれを養分にしていかないと、とも言ってたんですよ。」
いつもなら、諒が大きくうなずいて終わるところだが、
今回の麻也との冷戦の原因にしてしまったあの熟女はどうすりゃいいの?
と諒はまたふりだしに戻ってしまう。
するとそれを見透かしたように須藤は、
「あの女優さんは不倫なんでパスです。
諒さんに見合うお相手だけにしてください。」
今の状態で言えた義理ではないのだが、
やっぱり諒は、不貞腐れてでもいつも通りの主張をするしかなかった。
「…そしたら、やっぱ、麻也さんしかいないじゃん…」
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