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第17章の21(←リハ―サル中も恋に悩む諒)

 スタジオでマイクスタンドにもたれかかり、音を待つ。 そんなわずかな時間さえ、諒には疲れがじわじわとわいてくる。 肝心な歌い出しのシーンでも、簡単に流して終わりたくなる。 今日の須藤や三浦のために、ものすごく諒の心は揺れたから… (三浦くん、辞めてくんないかな…) それがいちばん簡単なのだが… (…って…) …やっぱり細身のところも、どこか中性的なところも、 認めてはいけないが、かわい…い… でも、雑然としたライブハウスということも忘れ、 下から雲の上を見上げたような麻也との出会いと、 殺風景な現場の雰囲気が消えない、 そして自分が上の立場から見下ろす三浦との出会いは、 まったく似て非なるものだった。  それに…三浦の立場も立場だ。 (今の俺が動いたら、とにかくトラブルしか起こんない…) たとえば、父親に相談されて、会社とモメる。 麻也との破局が近づく。 事務所の中で大問題になる。もしかすると外部でも。 何より… (麻也さんの前の事務所の社長のウワサみたいじゃん。 上だって本気じゃなきゃ下には声なんかかけちゃいけないんだよ…) 向こうに気があったとしてもあまりにリスクは高い。 というわけで、何かあれば、小野ばかり指名する。 これも良くないのはわかるが…

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