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第17章の28(←麻也王子の微笑が懐かしい諒)

 須藤にだけ帰ることを告げて、 また諒は麻也に見つからないよう急いでタクシーに乗り込んだ。 行先はもちろん今夜も宿泊先のホテルだ…  あまりに疲れていたので、ややだらしなくシートにもたれかかると、 色々なことが頭をよぎる。  このハードスケジュールで、自分もつぶれそうなこと… これが麻也といつもの状態で支え合っていれば違うと思うが… (でも、みんな、売れてる先輩も、こんなビッグウエーブに乗れることすら強運だというし… それは確かにそうなんだけど…) さすがに、弱っている麻也の姿がつらい。 そしてそれをいたわれない自分の状況も… (…そういや、俺…) 親しい人間との飲み会で、酔っぱらうと何度も自慢したものだった。 「俺は麻也さんだけでいいの! 他の男はどうでもいいの!  初めて買った宝くじで、1等1000億ぐらい当てたようなもんなんだから…」 それを聞くたびに麻也もいつも自慢げに微笑んでくれて… それに… (俺は舞い降りてきた天使と出会えて、一目ぼれしたのも事実だけど、 向こうも俺を選んでくれて…) …すごく愛してくれて…るはず…  ホテルの前でタクシーを降り、ため息をついてからエントランスに入りかける…と、 後ろから急に肩を叩かれた。  びっくりして振り返ると、直人だった。 「ごめん。こんなことして…」

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