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第17章の60(←麻也王子奪回作戦か?)
麻也の方も何か感情を示したいのだが、
ためらっているという感じらしいのが伝わってくる。
そこで諒が思いついたのは耳元でこう囁くことだった。
「勝手に家を空けてゴメンナサイ…」
すると麻也はほっとしたように、
「いいよ。諒にも事情があったんでしょ…」
と言いながらも、声は何となく暗くなっていく。
でも麻也は諒の肩から離れて、諒の目を見つめると、
「でも、日本一の夜にこうして諒が戻ってきてくれてよかった。
こうして一緒にいられて良かった。」
と言って、
また照れたように目を伏せる…
が、そこで麻也の体からは力が抜けたようになり、
びっくりした諒はまたあわてて麻也の体をかき抱いた。
そしてとにかく、黒髪ごしに、額にキスした。
それでもやっぱりお互いに言葉は出ない。
麻也の体に力が戻っても、再び誓うような口づけも、どちらからも出てこない。
かといって、愛が冷めたというわけでもない。でも、
<こんな遅い時間でごめんなさい>すら言えない。
まるで今夜も帰るのをためらったようで、麻也を傷つけてしまいそうで…
しかし、そこで、諒はいいことに気づいた。
(俺が攻めればいいじゃん…そうすれば、麻也さんも思い直してくれるかもしれないし…
それでダメでも、傷つくのは俺だけで済むし…)
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