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第1話の17
―もしもし、麻也さん、どうしたの? 迎えに行くよ。
怒るどころか、自分を気遣ってくれる、いつもと変わらぬ恋人の様子に、麻也は思わず泣きそうになったが、
「まだいいよ。ちょっといろいろあって。死んだりなんかはしないよ。諒、愛してるよ。」
―俺だって愛してるよ。だから事務所に顏見せるだけでいいから、来てよ。みんなで待ってるからさあ。
「ごめん。病気が出ちゃって。今日は安静にしてる。悪いけど、真樹と替わって。」
諒の大きなため息が聞こえたが、少しして真樹が出てくれた。
―もしもし、真樹だけど。病気、って、病院どうすんの?
「…あ…薬あるから大丈夫。あと俺、例の隠し部屋にいるから。諒には部屋があることも内緒のままだから、悪いけど何とかごまかしておいて。」
すると真樹はほっとした声で、
―わかった。何かあったらいつでも連絡して。
「ありがとう。それじゃあね。」
諒が背後でごにょごにょ言っていたようだったが、麻也は無視して電話を切り、電源も切った。固定電話は線を抜いた。
そしてまたベッドルームに戻り、羽根布団にもぐりこんだ。
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