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第2章の37
次の三枚目のアルバムが売れなかったら、契約書通り、バンドは解散、メンバーは解雇というのである。
中堅どころのプロデューサーは外され、新米のようなプロデューサーがやってきた。
それでも、その彼が熱心だったのが、せめてもの救いだった。
詞も曲も、プロデューサーを含めた5人がロックらしく作り、レコーディングした。
髪ももう立てないようにして、長い髪をおろしたままにした。メークも薄くした。
MA-YAは長い黒髪にふわふわのパーマをかけ、ファンからは「少女マンガから抜け出てきた王子様みたい」と騒がれたが、
コスチュームはこれまでの白が多いものから、黒をメインに変えた。
ほぼセルフプロデュースといってよかった。
でも、まだ予算がいくらかでもついたのは、社長の温情だと噂され、実際、社長は現場に来てはKYOに指示を出し…
…MA-YAは…熱っぽい視線を感じてうんざりしていた。
あれ以来、社長とは何もないが、それは自分の拒絶の他に、
噂が広がり過ぎたためだとMA-YAは思っていた。
黒髪のMA-YAはロックミュージシャンらしくなったと、
男性のベテラン関係者からも好評で、
ライブでの演奏もポージングも、まるで海外の有名どころのような華があると好感を持たれるようになっていた。
が、相変わらずよからぬ男たちは寄ってきて、MA-YAは魔よけを必要としたが、
その女の子たちも触ることができず、部屋で少し一緒に飲むと、お引き取り願っていた。
さっさと帰ってほしくて、魔除けを二人連れ帰ることもあった。
当然、恋愛なんて考えられなかった。
まあ、バンドがピンチなせいもあったが…
その頃である。密かにMA-YAの引き抜きや脱退が噂され始めたのは…
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