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第2章の38

 実際に、引き抜きの話はいくつも来た。 「もったいないよ。あんなバンドで。音もいい、ステージングもいい、ルックスもいい君が。」 「脱退してウチに来ないか? 」 MA-YAも心が動かないわけではなかった。 社長とはあれ以来何もない。 が、嫌なことがいっぱいあった二年間… でもMA-YAは3枚目のアルバムに賭けたかった。 誘われたバンドたちの音楽性に共感できなかったこともあったかもしれない。 「じゃあ、自然解散まで待つよ。」 と、冗談とも当てこすりとも思えることを言われることもあった。  そして、三枚目のアルバムは…ろくすっぽプロモーションもされなかった。 知り合いのライター達にも頼んだが、音楽雑誌でも小さな扱い。 プロモーションビデオも低予算でチャチな作り。 ツアーは東名阪だけ。  バンドとしてはロックっぽくなり、男のファンも出来てきたところで…  アルバムセールスが悪すぎるとのことで、解散が宣告されたのだった…  それでもメンバーが団結できていれば、インディーズに行くとか方法はあったのだろうが、 MITSUのボーカルには本人自身も先を見失っていたし、他のメンバーもついていくことができなかった。    KYOまでが、もうミュージシャンはやめたいと言い出していた。  そんな時、MA-YAは一人、事務所で坂口社長に呼ばれていた。

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