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第2章の40

「今うちに所属しているバンドが気にくわないというなら、当面はソロデビューでもいい。」 「いえ、社長、それは…」 すると社長は突然MA-YAをにらみつけ、怒鳴り始めた。 「ここまで譲歩したのに何だ! お前ひとりで何ができる! 俺をナメるな! 二度と俺の前に顔を出すな! メジャーから全部干してやる!出てけ! 」 それでもMA-YAは、お世話になりました、と頭を下げ、部屋を出た。 外のデスクにいた社員たちは、「社長に捨てられた扱いにくい愛人」でも見るように、MA-YAを見やった。  が、廊下で専務に出くわした専務は、 「MA-YA、ギターだけはやめるなよ…」 そう言ってくれた…  解雇となれば、すぐに寮を出なくてはいけない。  KYOこと恭一と一緒に片付けをしていた麻也の元に、一本の電話が入った。 ―もしもし、ワタクシ、遠藤と申しますが… 「もしもし、真樹? 」 ―あ、何だ、兄貴か。ねえ、雑誌で解散て出てたけど、どうなってるの? 「解雇されたんだ。今、寮を出るために片付けしてるとこ。」 ―解雇? 何で? 「アルバムも売れないし、とにかく売れなかったから。」 ―でも、次に行くとこあるんでしょ?  「いや、ない。社長に干されちゃって、メジャーのどこのバンドにも行けない。」 ―そんなことってあるんだ…

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