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第2章の43
話を振ったのは自分なのに、先行きが見えないのは自分だけと気づき、麻也は何となく寂しくなった。
それを察したらしい真樹は、
「兄貴はまずは大学復帰からなんで…」
「えっ、俺? 復帰するの? 」
「いやいやこの人ったら他人事だよ…」
恭一に大笑いされてしまった。
和気あいあいとしたムードのうちに、楽器店に着き、そこで恭一を降ろした。
二人きりになってしまうと、すぐ真樹は、
「兄貴、疲れてるだろ。寝てていいよ。母さんからも言われてるし。」
そう言われると、麻也はほっとしてしまい、するとどっと疲れが襲ってきた。
「ありがとう。じゃあ、お言葉に甘えて。」
瞼を閉じた途端に麻也は眠りに落ちた。
すぐに寝入った兄の、美しいけれどやつれた横顔を見て、真樹は痛ましいものを感じていた…
(この章終わり)
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