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第18章の11(←麻也王子、ライブKISSを模索中)
(せっかくまとまった時間が取れたっていうのに…)
それこそ例の鈴音とのコラボの時のギターの音や
ポージングも固めなくてはいけなかった。
できる作業は前倒しである。
(合宿レコーディングとかできれば良かったのかもね…
せめて合宿だけでも…)
でも、それが許されないぐらいの忙しさだった。
だからといって誰になんと言われても
今回のアルバムも自信作なのだが。
でも本当は麻也としてはちょっとギターに後悔もあったが…
それはどのアルバムにでも言えることだ。
ローディーのケンがギターのチューニングを終えて待っていたブースに、
麻也が入ろうとしたところで、鈴木の携帯が鳴った。
そして、
「…麻也さん、諒さんからキスシーンのポージング合わせませんかって…」
麻也は困った。今来られたら、たった今スタジオに到着した事がばれてしまう。
また<どこ行ってたの攻撃>が始まってしまうだろう。
(…こんな時、何で突然来るんだよ…この忙しいのに…
って、諒も忙しい中来てくれるんだろうけど…)
「15分ぐらいで着けるそうです。どうします、麻也さん?」
麻也は悩んだが断った方が面倒な気がして、いいよと答えた。
それからスタジオのブースに急いで入り、
ギターを下げるとケンや鈴木と一緒に、
スコアや歌詞のシートや汗拭きタオルも配置して、
2時間ここでやってました感も出してみた。
そして諒との<悪魔のディープロングキスシーン>の曲<マジェスティック・クラウド>を、
ブースの壁面のミラーに向かって引き始めた。
いざ弾き始めると、ライブビデオで見た、武道館のステージでの、
派手なコスチュームの諒と自分の姿が見える気がした。
しかし、その時麻也は、小さく声を上げてしまった
(あ、諒は…)
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