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第18章の12(←諒と抱擁しちゃう麻也王子)

…諒は自分が<鈴音の音作り>に時間を割きすぎていないかどうかを、 詮索しに来るのかもしれない… (それって、嫉妬なのか厳しさなのか…) どうあれ彼女関係のものは下の方に置いておこう、 と、麻也は紙類の順番も確認した。 バタバタしてほどよく汗もかけたところで、 「いやあ、麻也さんごめんね、急に…」 と諒が取ってつけたような、すまなそうな表情でやって来た。 「ううん、諒が恋しくなってたから、ちょうどよかった。」 諒は一瞬、おや、という顔をしたが、人目もはばからず長い腕を回して抱きしめてくれると、 「あれ、外部の人はいないんだね。鈴音ちゃんサイドの人も来てるのかと思った。」 「うん…って、確認する前にこんなことして…」 「いいじゃん、俺たちのラブラブをみんなに見てもらいたいもん。」 そう言う諒が可愛らしくて、麻也も諒の背に腕を回したが、 でもすぐに恥ずかしくなって腕を離し、諒をパイプ椅子に座らせて缶コーヒーをすすめた。 何気なく諒は、 「あっちの作業、まだ遅れてるってこと? 」 家でもできる話だよな、と麻也はどこかで思いながらも、 それを許さない空気がいつもできてしまうことも事実だったから、 諒のかたくなさがほぐれて良かったとも思う。

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