65 / 1053

第3章の4

 その時、後ろから肩を叩かれた。  振り返ると、なかなか可愛い、いかにもバンドが好きそうなケバい女の子の二人連れだった。 「『セクシュアル』のMA-YAさんですよね? 」 本来ならば否定したいところだが、麻也は、「これは使える!」と思った。 「そうだけど。」 「いやーん。握手して下さい。」 どうにか、苦手を抑えて握手しながら麻也は、 「ライブに来たの? チケットある? 」 「これから買うんです。完売しないか心配。」 「それならこれあげるよ。」 と、麻也は真樹にもらったチケットを差し出した。 「えー、いいんですか? お金は? 」 「招待された分だからいらないよ。」 「さすがだわー。ありがとうございます。」 彼女たちがチケットを手にしたところで、麻也はまたどうにか両手で二人の肩を抱き、 列の最後尾に向かって歩き始めた。 「いやーん、MA-YAったら積極的~。」 「あっという間に食われちゃうかも~。」 彼女たちの言葉に麻也は安心していた。 これなら男と無理やり関係させられたようには見えないだろう…

ともだちにシェアしよう!