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第3章の10
麻也にも、あの事務所でなかったら、という悔いはもちろんあり、
リベンジしたい思いはある。
しかし…
「そうだ、これを機に、バンド名も変えちゃったら? 」
諒が明るく言う。えーっと言う真樹と直人に、
「せっかく麻也さんが入ってくれるんだから、心機一転てことでさ。」
「じゃあ、ディスティニーの後に何かつけるのはどう?
それならこれまでのファンにもわかりやすいし。」
麻也がそう言うと諒が、
「たとえば? 」
「うーん、バンドや曲のイメージからくる単語とか。」
「麻也さんならなんてつける? 」
麻也は少し考え込んだ。
さっきのライブを見た限りでは、音楽性はマニアック、というか、
背徳的、退廃的という感じ。
「うーん、退廃的、って感じだから、アンダーグラウンド。」
うーん、と諒は考え込んだが、直人は、
「ディスティニー・アンダーグラウンド、長いけど、かっこいいんじゃないですか? 」
真樹もうなずく。諒も空気を読んだような形で、
「じゃあ、それで決まりですな。」
…と、急に決まったが…麻也は気づいていた。
このバンド名は、自分の心のもう一つの叫びであることに。
絶対にメジャーになんて行ってやらない…
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