79 / 1053
第4章の4
「動員かあ…俺ももっと動かなきゃな。」
「ドラムももっと客席あおらなきゃな。」
2人は口々に反省点を言いあっていたが、また諒は押し黙ってしまった。
(彼の世界観を、俺が壊しちゃったのかなあ…)
麻也が心配して諒の方に視線をやると、それに気づいた諒はなぜかあたふたする。
その時、
「ねえ兄貴、曲を書いてみる気ない? 」
嬉しい言葉だった。でもすぐにはっとする。
「ありがたいけど、諒クンや真樹の作ってきた曲とケンカしないかな。」
「いや、兄貴のディスグラ用の曲、試しにでも聴いてみたい。
バンドとして書いてくれるわけだから、ケンカはないんじゃない? 」
諒も身を乗り出してきたのを見て、麻也は密かにほっとして、
「諒君、今日、もしかして諒君の世界観を、俺が壊してしまったのかな? 」
すると諒はドキッとして、しどろもどろになり、
「いや、俺のはまだ発展途上だから、刺激になって良かったですよ…」
すると直人が、
「それじゃ長老、曲は早めに頼みます。」
「直人、何だよ、その長老、ってのは。」
「麻也さんのニックネーム。」
「ジジイみたいでいや~!! 」
諒まで大笑いした。
バンドのメンバー全員で笑えるのは本当に楽しいと、麻也は久しぶりに感じていた。
ともだちにシェアしよう!