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第4章の9

 麻也は懐かしいと思うが、他のメンバーには初めての経験に違いなかったので、 真樹や直人の方を見て、アイコンタクトで励ます。 2人とも笑顔で返してくれる。 でも、諒はどうなのか見えない。 一曲目が終わり、諒はマイクスタンドに手をかけたまま横を向いたが、その表情は硬く見えた。  二曲目の「マジェスティック・クラウド」という曲も派手な曲だったので、 麻也は動き、後ろの客まであおった。客は大喜びだった。 そして、ギターソロの後は諒に近づき、頬を寄せるようにして、自分も歌った。 諒は驚いたようだったが、すぐに何でもないように、一緒に歌い始めた。 すると、特に女の子たちがキャーキャー騒ぐ。 少しだけ歌うと、麻也は笑顔で自分の定位置に戻った。  いつも以上に汗だくのライブが終わると、楽屋では嬉しいことが待っていた。  店長が、売り出し中のインディーズバンドの対バンをやらないか、というのである。 「…ってことは、バンド2つでやるってことですか? 」 真樹がびっくりして訊き返すと、さらに店長は、 「麻也君が入って動員一気に増えたからね。 急だけど、今日なんか君たち目当ての客ばっかりだったから…どう? 」 ライブの日は少し早まったが、もちろん断るわけがなかった。

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