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第4章の10
店から出ると、ディスグラに加入して初めて、
麻也にも「出待ち」の女の子たちが10人ばかりいた。
「セクシャル」のころからのファンだという子は、麻也にプレゼントを渡してくれながら、
「MA-YAさん、このバンドでメジャーに戻るんですか? 」
ギターケースを背負った麻也は答えた。
「うん。多分ね。ディスティニー・アンダーグラウンドの麻也として。」
…と、カッコつけてはみたものの、打ち上げは格安のファミレスだった。
麻也は居酒屋を希望したのだが、
「そんなお金はありません! 」
と、真樹に一喝されたのだった。
訊けば、バンドの共有金でCDを制作して販売する予定なのだという。
ドリアをつつきながらさりげなく、麻也は向かいの諒に、
「…今日、俺が一緒に歌ったのどうだった? やっぱり邪魔かな? 」
と尋ねてみた。すると諒もうつむいてサラダをつつきながら、
「いや…びっくりしたけど…ああいうのもいいかなって。」
「アドリブもいいけど、あれ毎回やったら? 個性的でいいと思うぜ。」
と、真樹はこっそり麻也に目くばせしながら言う。
すると諒は下を向いたまま、力なく、
「それじゃあ、長老、次回もお願いできますか? 」
「…あの曲でいい? 」
諒への道は遠い。
思わずトーンダウンした麻也であった。
が…
ふと気づいてびっくりした。
(…俺、あんなに諒に近づいても平気なんだ…)
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