89 / 1053

第4章の13

「12曲も一気にやるのって大変だなあ…ペース配分が難しい…」  スタジオで真樹はふと、そうもらす。 が、麻也はすましたもので、 「プロになったら20曲近くやるんだよ。はい、練習練習。」 その間にも、諒は長い手をふわふわと動かし、イメージトレーニングをやっている。 「じゃあもう一回合わせるから、諒と兄貴は注意してやってね! 」  そして始めるのは例の曲…麻也と諒が一本のマイクで歌う曲だった。  肝心の、二人の息が合わない。 頬を寄せて、なのに、諒がちらちらと麻也を見過ぎてしまうので、 客席からは不本意に見えるとみんなは思う。 「ちょっ、諒、ダメだわ。」 「じゃあ兄貴、もうここばかりやってる時間ないから、 当日はまた兄貴のアドリブでガーッといって。諒はフツーに歌ってるだけでいいから。」 いつもなら何か言い返しそうな諒は、なぜか黙ってうなずくだけだった。

ともだちにシェアしよう!