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第4章の15
反省もいろいろあったが、楽屋で4人が達成感を味わっていると、
店長に連れられて、本田というスカウトマンがやってきた。
彼は麻也に名刺を渡すと、
「個性的なうえにステージングが上手いバンドだね。
ルックスもいいし、みんな身長が高くて見栄えがするね。」
すると店長が複雑な面持ちで、
「もうウチは卒業なんだってさ。」
「えっ? 」
メンバーが訊き返すと、本田は、ここよりもっと広いライブハウスの名を挙げ、
「そこをいっぱいにしてほしいんだ。
そしたらCD出せるよ。」
急なことで、喜ぶのも忘れて4人は動揺した。
CDは出したいが、どうやって宣伝すればいいのか…
「あんまりカッコいいから、特別にポスターは作ってあげるよ。僕が思いつくところは貼るけど…
まあ、あとは君たちで貼ってね。」
「ウチでも5枚くらい貼ってあげるよ。」
店長も口添えしてくれる。
「それにあと1回はここでライブやるんだから、その時も宣伝すればいいじゃない。」
戸惑うばかりの三人をさえぎるように、麻也は答えた。
「じゃあそれでお願いします。ポスターの撮影はいつですか? 」
「あ、兄貴ぃ…」
「さすがは麻也君、話が早いな…早すぎてちょっとスケジュールがわからないから、
会社に戻って、明日電話するよ。麻也君に電話すればいいのかな? 」
「はい。」
期待してるよ、と麻也の腕をポン、と叩くと、本田は帰っていった。
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