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第4章の17
出来上がったポスターは、本田の会社まで、麻也と真樹で取りに行った。
「へえ、レコード会社ってこうなってるんだあ…」
と、ビルの中で真樹は喜んでいたが、麻也にしてみれば前に所属していたところよりかなり小さいので、
ちょっと不安になる。
「いい仕上がりだよ。ほら。」
と、本田が1枚見せてくれた。
A2びっしりに4人の顏が写っていて、目立つようにバンド名が入っている。
ライブの告知の字はやや小さい。
「ありがとうございます! 」
2人は深々と頭を下げて、そのポスターを受け取った。
しかし…ビルを出てから、麻也は気がついた。
(…連絡先が「ドメスティカ・インディーズ」になってたなあ…)
まあ、ライブハウスも変わってしまうし、メンバー全員自宅なのでありがたいと言えばありがたかったが…
(…囲い込まれたような気もするなあ…)
これからもっと大手にも出会えるかもしれないのに…
ちょっとうかつだったな、と麻也は思った。
それでも気持ちは少しうきうきして、大喜びの真樹と車に戻る道すがら、
どちらからともなく、
「ここはひとつ、恭一君の店でしょう。」
ということになった。
都内でライブハウスや貸しスタジオ以外の伝手はそこしかなかったのだ。
何より有名店だし…
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