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第4章の18
ちょっとご無沙汰だな、と後ろめたく麻也が思いながら店のガラス戸を開けると、
恭一が笑顔で迎えてくれた。
「ポスター見たよ。カッコいいじゃん。」
「あれ? どうして? 」
恭一の視線の先を追っていくと、ショーケース脇の壁に、すでにポスターが貼られていた。
「イチ押しの新人です、って、レコード会社の人が貼ってったよ。」
「なーんだ、そうだったのか…」
しかし恭一は麻也の手元のポスターを見ると、
「何枚あるの? 二階にも貼るよ。」
「何枚でもいいよ。できるだけ。」
三人で二階に上がり、また壁に二枚、貼ってもらった。
恭一はしみじみと言う。
「麻也、いいバンドが見つかって良かったね。あっと言う間じゃん。」
ちょっとしんみりしかけたところで真樹が、
「いやあ、まだまだですよ。兄貴に引っ張ってもらうばっかりで…」
などと、珍しく殊勝なことを言う。
思わずみんな吹き出したが、恭一はまたしみじみと言った。
「売れるよ、このバンドは絶対。」
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