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第4章の21

 それでも、観客の反応が最高潮に達すればまだ良かったかもしれないが、  それもかなわなかった。  言い訳にはならないが、まだ慣れない広めのステージで、 麻也以外のメンバーの動きもこじんまりとしてしまった。 諒のハグもちょっと白々しいほどに。 12曲制にも慣れていないので、ペース配分も上手くいかなかった…  打ち上げのファミレスでは、諒は今にも泣きだしそうな顔をしていた。 見かねた麻也が声をかけようとすると、 「…悔しい…」 絞り出すような声だった。 「…せっかくのチャンスだったのに…」  それは真樹と直人も同じようだった。 確かにそうかもしれないが、麻也は三人に前を向かせるしかない。 「本田さんは今回一回で、って明言してたわけじゃないし…」 「でも楽屋に帰りは来なかったし…」 「俺に会っただけで帰ったんじゃないかな? 」 「来てたの?! 」 「うん。まあ、俺にも首をかしげるジェスチャーをしていっただけだったけどね。」 それを聞いた三人は、またがっくりと落ち込む。

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