101 / 1053

第4章の25

 リハーサルの回数も増やし、各自の自主練習も増やしていたが、 一向にキマらないのが、諒と麻也のキスとカラみのパフォーマンスだった。  まずは、リズム隊が休憩している時に、死角で練習を始めることにしたのだが… クールだったはずの諒が、意外と優しい表情を浮かべて後ろからついてきて、 初めてのキスは、まるで恋人みたいな表情で顔を近づけてきて… …舌まで入れられて?! でも、優しい動きで… そういった行為とはかなりごぶさただった麻也は、反応しそうになるのを必死でこらえて… 諒の唇が離れても、何だか意見も感想も、とにかく声を出すのがはばかられ… すると、諒が、まるでファーストキスの女の子をいとおしむような笑顔で、 「そっかー、麻也さんまだここまでは大丈夫なんだね♪ 」 恥ずかしくて、麻也は声が出せない…と、諒の長い腕に、ギュッと抱きしめられ、ほおずりをされた。 それが何だか嬉しいような…って、この感情は、何?! …そこで…白い目を感じる… 「ちょっ、パフォーマンス以上のことしないでよ。ウチの大切な兄貴に…」 「何だよ、フロント同士のコミュニケーションも大切でしょ。」 「諒は優しすぎて、割り切ったオトナのお付き合いできないじゃん。 いっつもそれで最後は自分が泣いてるじゃん。」 直人の指摘のおかげで、諒の性癖のようなものが聞けたのも、なんとなく嬉しかったりして… 「もー、それじゃあ演奏と合わせよう。気が変わって兄貴が逃げ出したら大変だからな。」  と、休憩を切り上げて、2人がカラむ予定の曲「マジェスティック・クラウド」の練習を始めた。  が、キスが上手くいかない。    2人で照れてしまったり… 「諒らしくない。プレイボーイが男相手に何照れてるの。」 「俺、両刀だもん。」 「それは主義主張で、男の経験ないんでしょ。」 「…ハイ…」  せっかくキスできても、 「俺の横の髪に隠れて、見えなかったと思う…」 と麻也もまだ勝手が掴めず…でも、諒のやわらかな唇の感触が、嬉しいような、でもそれは隠したくて… しかし、さすがにリズム隊の冷たい目が気になったらしく、 「本番一発でキメるから、先に進もう。」 と、諒も言い出すようになってしまった。

ともだちにシェアしよう!