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第4章の25
リハーサルの回数も増やし、各自の自主練習も増やしていたが、
一向にキマらないのが、諒と麻也のキスとカラみのパフォーマンスだった。
まずは、リズム隊が休憩している時に、死角で練習を始めることにしたのだが…
クールだったはずの諒が、意外と優しい表情を浮かべて後ろからついてきて、
初めてのキスは、まるで恋人みたいな表情で顔を近づけてきて…
…舌まで入れられて?!
でも、優しい動きで…
そういった行為とはかなりごぶさただった麻也は、反応しそうになるのを必死でこらえて…
諒の唇が離れても、何だか意見も感想も、とにかく声を出すのがはばかられ…
すると、諒が、まるでファーストキスの女の子をいとおしむような笑顔で、
「そっかー、麻也さんまだここまでは大丈夫なんだね♪ 」
恥ずかしくて、麻也は声が出せない…と、諒の長い腕に、ギュッと抱きしめられ、ほおずりをされた。
それが何だか嬉しいような…って、この感情は、何?!
…そこで…白い目を感じる…
「ちょっ、パフォーマンス以上のことしないでよ。ウチの大切な兄貴に…」
「何だよ、フロント同士のコミュニケーションも大切でしょ。」
「諒は優しすぎて、割り切ったオトナのお付き合いできないじゃん。
いっつもそれで最後は自分が泣いてるじゃん。」
直人の指摘のおかげで、諒の性癖のようなものが聞けたのも、なんとなく嬉しかったりして…
「もー、それじゃあ演奏と合わせよう。気が変わって兄貴が逃げ出したら大変だからな。」
と、休憩を切り上げて、2人がカラむ予定の曲「マジェスティック・クラウド」の練習を始めた。
が、キスが上手くいかない。
2人で照れてしまったり…
「諒らしくない。プレイボーイが男相手に何照れてるの。」
「俺、両刀だもん。」
「それは主義主張で、男の経験ないんでしょ。」
「…ハイ…」
せっかくキスできても、
「俺の横の髪に隠れて、見えなかったと思う…」
と麻也もまだ勝手が掴めず…でも、諒のやわらかな唇の感触が、嬉しいような、でもそれは隠したくて…
しかし、さすがにリズム隊の冷たい目が気になったらしく、
「本番一発でキメるから、先に進もう。」
と、諒も言い出すようになってしまった。
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