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第18章の16(←麻也王子とクマちゃん)
がっかりして、仕方なく麻也は、自分たちのファンである社長の姪っ子からもらった、
やや大ぶりなクマのぬいぐるみを、
諒の右腕の下の方に置いて、自分の部屋で寝ることにした。
(かえって新しい薬のテストには良いかも…)
そう気づいて寂しさが少しなくなった。
しかし…
新しい薬の最初の夜の効き目は、それまでの薬とはあまり変わらず、
麻也はまた浅い眠りで、朝を迎えた。がっかりした。
だるさもあいかわらずだったが、薬のことを気づかれたくなくて、
諒を部屋に入れないために、
どうにか起きてリビングまで行った。
すると諒もパジャマのままで、疲れの抜けない顔でソファーでぐったりしていたが
「麻也さん、クマちゃんありがとう…っていうか、何でクマちゃんだったの…?」
二人とも何となく笑い出してしまった。
「いや俺はベッドで寝る意志はあったのに、諒が大の字だったから…
俺の代わりというか、ここまで来たんだよ、っていう証拠というか…」
「なあんだ、それなら俺をどけてくれればよかったのに。
どーせ起きないくらい深く寝てたと思うし。」
そしてゆるゆると諒は立ち上がって、麻也さんごめんね、と、後ろからそっと抱きしめて耳にキスをくれると、
朝メシ作る元気が出たわ、とはりきってキッチンに向かい、用意を始めた...
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