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第18章の18←わがまま麻也王子

それ以来、諒は穏やかだ。 が、簡単な朝食に添えられていた、先に出かける時の置き手紙や、 その代わりのメールはいつしかなくなっていた... でも、そんな時は、現場で会えば、誰が周りにいても諒は抱きしめてくれて、 頬にキスはしてくれたけれど。 そして耳元でこっそりと、 「…麻也さん、朝何か食べてきた? チョコのクロワッサンぐらいは食べられた…? 」 と、心配してくれるのが嬉しかったが... (俺のワガママなのはわかるけど、やっぱりメッセージがほしいな...) でも、それが言い出せないのは、 諒の疲れをこらえた横顔と、 暇さえあれば何か書きつけているネタ帳のせいだった。 きっと来週にレコーディングが控えているシングルの歌詞だろう... 麻也はまだ少ししかできていないが... そして、あい変わらず薬の効き目は悪く... 鈴木と2人きりになると麻也はグチってしまう 「...生活が不規測だから、効かないのかな...」 言ってから、ムダなことを...と後悔したが、鈴木は、 「...入院とか、どうですかね? とりあえず、心身共に休めるから... 僕は、個人的には、 それくらいされた方がいいと思ってますよ。」 その言葉が麻也には本当に嬉しかったが、 それが知られるの何となく恥ずかしくて、 麻也は窓の外に目をやってから、 「でも、こんな時期に、そんなわけにもいかないしね...」 そう答えながらも、麻也は寂しさも感じた。 (どうして諒からこんな言葉かけてもらえないんだろう...) (...って、俺が隠してるせいか...) (にしても、さすがの諒も俺の異変に気づいてくれないんだ・・・) (早く諒と2人っきりで過ごしたい...まったりと...) 次の現場は、明日のギター専門誌のインタビューに備えて、 と、次のシングルに向けてのギターの音の確認でスタジオ...のはずが、 気づけば見慣れた撮影スタジオで、 玄関前で、真樹が付き人も連れずに一人で笑顔で待っていてくれた。 「あれ?対談?」 思わず麻也が声をあげると鈴木は本当にすまなそうに、 「すみません、スケジュールの変更が多くて...」 麻也は気の毒になって、 「ううん、俺、ぼんやりになってるから。鈴木さんだけが頼りだから。」

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