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第18章の19(←麻也王子、弟となごむ)

しかし、麻也が車から降りて歩み寄ると、 真樹の表情はすぐに真面目なものになり、 鈴木すら避けるようにして、 麻也の耳元にささやいてきた。 「兄貴、今日、仕事終わりに二人でウチで飲まない? ビールも買ってあるからさ。」 ちょっと断れないムードで不思議な気もしたが、 弱っている麻也は嬉しい気分にもなって、 いいよ、と答えた。  その後は、なじみのインタビュア一とカメラマンが盛り上げてくれて、 ロック界きっての<美形仲良しブラザーズ>らしい写真とコメントを引き出してくれた。  …しかし、帰り際、真樹はため息をついて、 「…こんなに撮影も頑張ったのに、 諒にはネギ坊主ともしゃもしゃの対談とか言われるんだろうな…」 「なにっ! 」 麻也はふざけて怒ったふりをした…のだったが、真樹の言葉がひっかかった。 それで悲しくなって、おずおずと、 「諒ってば、俺のいないところではそんな風に俺のこと言ってんの? 」 「えっ? ええっ? 」 真樹はショートのプラチナブロンドの下の、 一重まぶたの綺麗なアーモンドアイをぱちくりさせている。 「…その…もしゃもしゃ、なんて…」 それを聞くなり、真樹は大笑いした。 「諒がそんなこと言うわけないじゃん!  <もしゃもしゃ>は<ネギ坊主>に見合った言葉かな、 って俺のアドリブだよ。」 「えー、じゃあ、諒は俺のことなんて言ってるの…? 」

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