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第18話の20(←諒の愛を痛感の麻也王子)

「…おたくのお兄さん、とか…」 そこで真樹が吹き出したので、麻也は真樹の腕をがっちり捕まえた。 「兄貴、痛いって…」 と、真樹が身をよじりながら続けるには、 「…尊敬の声で、麻也さん、が多いかな…」 「…じゃあ、何でお前、ずっと笑ってるんだよっ! 」 「いやあ、ははは…」 「じゃあ今夜キャビアとフォアグラ追加決定! 」 麻也は、バン、と手を離すと、真樹に背を向けて玄関に向かって歩き始めた。 でも、ツボに入ってしまったらしく、真樹は動けないくらいゲラゲラと笑いながら、 「にーちゃん、それは…」 「はーい、シャンパンとトリュフも追加っ! 」 と、麻也は一瞬だけ振り向いて命令すると、また歩き始めた。 が、その背中に向かって、大声で、 「酔っぱらった諒はねー、天使の麻也たん、ビーバーの麻也たん、 王子の麻也たん、子リスの麻…」 「大っきい声で 言うな~!!! 」 それだけ叫ぶと、麻也は恥ずかしさにその場を走り去った…  …真樹のおかげもあって、気分転換はできたが… (…諒…裏表がほんとにないんだな…) と、思い出して麻也はひとりで恥じらいつつも… こんな俺のどこが天使なのかな… でも、愛されてるんだな、俺…  …リハーサルスタジオで、ギターを抱え、 目前にレコーディングの迫ったシングルの音に悩みながら、 そんなことも考えて頭の中は逃避…それにしても音が… (…決まんねえ…) 真樹に詫びを入れて、作業を続けようかと思っていた時に、 ブースの向こうに、真樹の姿が見えた。早めに迎えに来てくれたらしい。

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