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第4章の31
麻也は無言のまま、ちびりちびりとワインを飲む。
「魔法って、そんなにストレスかかるの? 」
「お前もやってみろ、ってんだ。」
「兄貴もそうなの? 」
麻也は何も言えなかった。頭が混乱していた。
「何があったんだよ? 」
何も、と諒は吐き捨てるように言った。そしてテーブルにひじをつき、
「こっちは女と会う時間も削ってバイトしてボイトレとかイメトレとか、
パントマイム習ったりとかしてんのにさ。」
これではまるで自分が悪いようで麻也は困ってしまった。
リズム隊があわてて機嫌を取る。
「いいよ、彼女とぐらい会えよ。」
「その子とはもう別れたよ。会えなさ過ぎて。」
「…」
彼女のいる二人には言葉もない。
矛先を変えて直人が、
「ま、麻也さんのデートのペースは? 」
麻也はワインにむせた。そして何と言ったものか迷ったが、
「俺はもうね、そういうのはいいの。」
ちょっと諒の表情が変わった気がした。
あの事件以来、本当に麻也は誰とも肌を重ねていない。
ツアーの時、魔除けに女の子をひっかけて部屋で飲んだことはあったが、
何もせずにお引き取りいただいていた。
女がダメという噂はそのあたりから広まったのかもしれないと、今になってみれば思う。
「兄貴、このトシで枯れちゃダメだよ。早すぎて話にならないよ。
アーティストはやっぱ恋愛してないと。
いつぞやの女二人だってどうしたの。」
「いいの。俺は。」
そう言う自分を、諒がうつろな目で見ているのが、麻也にもわかった。
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