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第4章の32
次の週は悲劇だった。
週末、大学のロック同好会の飲み会に行った真樹が、怒り狂って帰ってきた。
麻也の部屋に大の字になって寝転がると、
「同好会、やめてきた! 」
と言う。
「ええっ? 何で? 忙しいから? 」
「違うっ! 」
と言ったきり、口を閉ざす。
「直人や諒はどうしたの? 」
言葉にかなり困っているようだった。それで麻也ははたと気づき、
「俺に関すること? そんな…」
困るとも言えず、言葉を濁した。真樹はまだ次の言葉に迷っている。こんな弟は珍しかった。
「直人も一緒に辞めてきた! 諒は来てなかった! 」
先輩たちの妬みがすごいんだ、と、真樹はがっかりしたように言う。
「久しぶりに会ったのに、先輩たちが、メジャー行くんじゃないの? とか、大学まだ来るの?とか。」
「何それ…」
「お兄さんのコネがあって良かったねとか…そんなのはまだマシな方さ。」
「まだ上があるの? 」
真樹の表情にはためらいがあった。しかし、思い切ったように、
「諒に裏切られてたんだ。」
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