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第4章の33

ショックで麻也は口ごもった。だが、どうにか、 「どういうこと? 」 「兄貴がここに帰ってきた頃、格上のインディーズバンドから引き抜きにあってたんだって。」 「兄貴が加入したのを見計らってから、そっちの話を蹴ってたんだって。」 「そんなこと、一言も相談してきやしねえ。今日初めてみんなに聞かされたんだ。」 「お兄さんがキレイで良かったわねー、だって。 アイツは両刀だから、俺が…兄貴を献上したんだろうって…」 あまりにもな話だったので、麻也は真樹の怒りをまずは鎮めようとこう言ってみた。 「真樹、両刀を差別しちゃいけないよ。」 「えっ? そっち? まさか兄貴も? 」 麻也は傷がうずくのを感じながらも続けた。 「何はともあれ諒はバンドに残ったんだろ? それでいいんじゃないの? 」 「俺は何だか納得できない。」 「ディスグラに魅力があるから残ったんだろ? そういうもんじゃないの、プロのバンドなら。」 「…」 「お前がお友達として絶交するのは勝手だけど、諒にはボーカリストとして残ってもらうよ。 あれだけ磨かれたコはそう見つからないと思うから。」 「兄貴はそれでいいの? 」 「うん。まあ、少しは俺の方から言っとくよ。」 最後の言葉で、真樹の気持ちは少し落ち着いたようだった。

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