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第4章の35

 その後は、真樹たちにピックアップしてもらった。  初めて機材車の後部座席に麻也は諒と腰掛けた。  BGMはデビッド・ボウイの「ジギー・スターダスト」だった。  話題に一瞬困った麻也は、以前見たボウイのライブビデオの話を始めた。 「…それが、セットもダンサーもゴージャスなんだけど、デビッド・ボウイが登場した途端、全部邪魔に見えてきたんだ。 ボウイのオーラっていうかなんていうかがすごくって。」 諒は麻也を見つめながらおとなしく聞いている。 「…何が言いたいかっていうと、諒ならそれくらいになれるかなあ、ってこと。」 「いや、そんな…」 すると助手席から直人が、 「メンバーがジャマになっちゃ困るけどな。」 「勝手にどっか行っても困るけどな。」 真樹も合いの手を入れる。諒は照れ笑いをする。 その時、どうしてか麻也はこんなことを言ってしまったのだ。 「でも俺は、いくら絡みがあってもミック・ロンソンにはなりたくないな。」 ボウイと絡んでいたギタリストのミック・ロンソンは、 「ジギー・スターダスト」のプロジェクトだけでボウイと別れていた。 「…早くに諒と別れるの寂しいもん。」 すると、諒の顏からなぜか笑みが消え、でも目をそらした横顔は、照れたように笑っていた。

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