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第4章の36
とはいうものの、今度のライブハウスをいっぱいにできた頃から、
スカウトマンの本田は姿を現さなくなっていた。
「CDの話はどうなったんだろう。」
しょげる3人を前に、麻也はこう言うのがやっとだった。
「社内で可能性を模索してくれているのかもよ。
まあ、ダメなら他の会社を自分たちで引っ張らなきゃ。」
そう言った矢先から、いくつかのインディーズレーベルから、CD化の話が舞い込んできた。
しかし麻也にも迷いはあった。全くのインディーズからでもCDを発表して知名度アップにつとめた方がいいのか、
それとも本田のところのように、メジャーの会社のインディーズ部門との出会いを待った方がいいのか…
さらには、今のライブハウスより広いところとなると「会館」と名がついたところになってしまい、
スタッフもいない自分たちでは運営ができない。
ならば、都内だけでなく、近場から名古屋くらいまでの「ツアー」をやった方がいいのか…バンドの悩みは尽きなかった。
救いだったのは、音楽雑誌に取り上げられるようになったことだった。
ほんの小さなスペースであることも多かったが、「セクシャル」時代に知り合ったライターだと、
写真も撮影してくれて、4分の1ページくらいで載せてくれたりした…
麻也の紹介にどうしても「元セクシャル」とついてしまうのには、何とも複雑な気持ちだったが。
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