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第5章の3
当日はドキドキだった。前々日の打ち上げの時からみんな緊張していたが…
正直、こうなってみると、麻也は再びのメジャーデビューでいいのか、ちょっと悩んでしまう。
が、せっかくの話、まずは様子を見てみることに麻也は決めた。
受付で本田の名を出すと、会議室に案内された。
緊張して待っていると、本田が今後の担当者の中島と、制作部長を連れて入ってきた。
人生を決める打ち合わせだが、まあ、契約金はそう多くはないものの、今のところは悪くはない契約内容だった。
バンドの基本のコンセプトもこのままで行く。
音楽性を変えろとかファッションを変えろなどとも言われなかった。
それどころか、退廃的なことを表現しつつ、演奏にインパクトがあるのがいいなどと言われ…
ただ、レコード会社で何組もデビューしていく新人バンドの中で目立って、
強力プッシュしてもらうにはどうしたらいいのかと麻也が考え始めた時、部長にいきなりこう言われた。
「君たちはイチ押しの新人だから。こっちも強力プッシュするけど、
君たちもがんばってください。プロの中に入ってしまえば、
君たちはまだまだ原石にしかすぎないんだから。」
そして、そのあたりは麻也君が詳しいと思うから良く話し合って、とも言われた。
「まあ急がないからゆっくり考えて決めてよ。」
と、本決まりのような口調で中島は言うが、日をあければ立ち消えになってしまうような気がして、
メンバーたちは不安になった。が、
「事務所はねえ、目の前のマンションの3階。行ってみる? 」
本田にそう言われて、4人はついていった。
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