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第5章の4

 マンションで、部屋に入ると、 「こんにちは。社長いる? 」 と、本田は親しげに社員に声をかける。社長室だと言われ、今度は隣の部屋に通される。  そこにいたのは何とも人のよさそうな40がらみの高橋社長だった。 「ディスグラのメンバーを連れてきましたよ。」 「ああ、どうも。しかし近くで見てもデカいなあ。」 自己紹介を済ませて、すすめられるままソファに座ると、 「みんな本当に手足が長いねー。ステージ映えするわけだ。 「社長も見に行ったんだよ。おとといのライブ。」 全然知らなかった…と麻也以外の3人が動揺していると、 「これからプロになるのには苦労が多いとは思うけど、がんばって。」 麻也は、再挑戦の機会が与えられたのだと、身の引き締まる思いだった。 他の3人も、背筋が伸びている。 「それで…やっぱりウチは事務所だから… 君たちのいろんな事情を把握しておかなきゃいけないんだ。 マスコミ対策もあるし。」 マスコミと聞いて、また麻也以外の3人は驚く。 「そうだよ。油断できないんだ。あっという間に売れて、あっという間に恋愛をすっぱ抜かれて、あっという間に売れなくなる人だっているんだから。 バンドブーム以来、ロックミュージシャンも大きく扱われるからね。 そうなるともう、ファンが大変で…」 経験があるらしく、高橋は笑う。そして、 「じゃあ、ちょっとだけ聞かせて。ごめん、全然わからないけど、この中の兄弟って…」 麻也と真樹が手を挙げると、 「そうなんだ。全然似てないね…」 「良く言われます。両親一緒です。フツーの家庭です。」 真樹の言葉に、先回りされてしまった、と高橋は笑い、 「わかりました。では、次の質問には絶対正直に答えて下さい。 言っておいてくれれば、どうやっても秘密は守りますから。」 麻也には何となく見当がつく。 でももう自分には関係ない。

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